6月のReSCHOLA於:旧・魚津市立大町小学校

会場 : 旧・魚津市立大町小学校 富山県魚津市本町1-10-39
電鉄魚津駅から歩いて約6分。今回の会場となる旧・大町小学校は、近隣の小学校と統合され2018年4月に約145年の歴史に幕を閉じた。体育館は現在も一般開放されており、清潔に保たれている。それは、まだ息づいているような現役の装いであり、地元の方々に大切に使用され、今なお愛され続けている証しである。

第一回「レスコラ」に参加した
二人のシェフ

谷口英司L’évo(レヴォ)オーナーシェフ
たにぐち・えいじ/1976年、大阪府生まれ。
和の料理人だった父親の背中を見て育ち、料理人を志す。神戸でフレンチを学んだ後、渡仏。フランスの三つ星店「ベルナール・ロワゾー・オガニザシオン」で修行、最先端のフレンチの習得。帰国後、2010年に「レヴォ」の前進「西洋膳所 サヴール」のシェフに就任。2014年に「レヴォ」をオープン。富山のさまざまな食材を使用した「前衛的地方料理」を提供し続けている。
from TOYAMA
齊藤輝彦アヒルストア 店主
さいとう・てるひこ/1977年、福岡県生まれ。
千葉大学工学部建築学科卒業後、設計事務所勤務などを経て、2004年にテイクアウトランチ専門の移動型店舗「スター食堂」を千葉県柏市にて開業、その後、渋谷へと移動。2008年に妹の和歌子さんと東京・富ヶ谷にワインバー「アヒルストア」をオープン。気軽な雰囲気でヴァン・ナチュール(自然派ワイン)と料理、自家製パンを楽しめる店として、連日満席の人気店となる。
from TOKYO
  • ワイン / 池崎茂樹 wine Bar ales店主
  • 音楽 / 阿部海太郎
  • サウンドデザイン / 甘糟亮
  • 幻燈 / nakaban

第一回のテーマ食材は「白エビ」

  • 普通の体育館が
    非日常の世界に変化する
    6月15日、富山県魚津市。2018年に4校の統合で休校となった旧・大町小学校の体育館が、一夜限りの素敵なレストランに変貌を遂げた。この日、第一回が行われた北日本新聞社主宰のイベント「ReSCHOLA(レスコラ)」は、少子化や人口減少により県内で休校や廃校になる学校が相次いでいる問題を背景に、休・廃校になった学校をレストランとして再利用するプロジェクト。レストランの語源であり「回復」を意味するrestoreと、「学校」を意味するラテン語scholaから名付けられたレスコラは、季節ごとに異なる学校をめぐる「移動型ポップアップ・レストラン」である。
  • 「人が去った学校に、再び賑わいを」。教室やグランド、体育館など、かつて人々が集い学んだ、多くの人々にとっての大切な記憶が宿っている空間に再び足を運ぶことで、改めて地域の魅力に目を向ける機会をもたらしたい。そんな一夜を提供するための料理を生み出すのは、富山県内で活躍するシェフと県外から招かれたゲストシェフ。2名の料理人が富山の旬の食材ひとつをテーマに設定した上で、それぞれ新たなメニューを考案し、一つのコース料理を完成させるという趣向だ。

  • 初の開催となった今回のシェフは、自ら「前衛的地方料理」と称する地元食材を駆使した独自のフレンチを提供する富山市春日のレストラン「レヴォ」オーナーシェフである谷口英司氏と、近年のヴァン・ナチュール(自然派ワイン)人気の火付け役にもなった東京・富ヶ谷のワインバー「アヒルストア」店主の齊藤輝彦氏。タイプの異なる両シェフが腕を振るうテーマ食材は、ホタルイカや寒ブリなどと並び、豊穣の海・富山湾を代表する海の幸として知られる「白エビ」に決定。6月が最も旬とされ、「富山湾の宝石」とも称されるこの美しいエビが、さまざまに姿を変えて調理されることになった。

  • レストランを演出するのは料理人だけではない。地元の設計デザインチームが手掛けた瀟洒なインテリア、そして音楽家の阿部海太郎氏が提供料理から着想を得て制作したオリジナル楽曲が会場を彩り、また画家のnakaban氏が文字やイラストレーションによってそれぞれの料理を表現するライブパフォーマンスも披露。食とアートが融合し、まさしく五感で味わえる画期的なレストラン空間が出現した。

  • 二人のシェフがもたらす
    「白エビ」の新たな可能性
    今回のレスコラに参加した人々は、事前の募集告知を通じて5倍の抽選倍率の中から選ばれた老若男女50人。これまでにないコンセプチュアルなイベントに胸を膨らませて足を運んだ人々をまず驚かせたのは、見慣れた古い校舎のほの暗い廊下の先に広がる「異空間」だった。
  • 富山県内や金沢の家具店、気鋭の花人らが協働し、ヴィンテージ家具や間接照明、植物などを効果的に配した洗練されたダイニング空間は、そこが体育館であるとはにわかに信じがたいほど。ヨーロッパの晩餐会を思わせるシックなムードの中、この一夜のためにシェフたちがアイデアを凝らした料理が3品ずつ、その後締めのデザート1品ずつの計8品のコース料理が順次、提供されていく。また料理に合わせてサービスされるワインは富山の人気ワインバー「alpes」店主の池崎茂樹氏が用意した。

  • 「海の近くに標高の高い山があり、ミネラルを多く含んだ綺麗な水が水深の深い海へと一気に流れ込む富山は食材の宝庫」と両シェフが声を揃えるとおり、どのメニューにも富山独特の自然環境が育む豊かな食材がふんだんに使われるが、そこにはそれぞれのシェフの斬新な発想と高い技術、細やかな心遣いが生きている。「正直を言えば、白エビは料理人泣かせの食材。あれこれを手を加えずそのまま食べてもすごく美味しいものですから」と苦笑する谷口シェフだが、だからこそさらに美味しく食べてもらうための工夫に力が入る。

  • げんげ、ハチメの稚魚などの魚とロメインレタスと白エビ、飯蒸しで谷口シェフが海・山・畑のバリエーションを表現した前菜でスタートし、齊藤シェフは旬の山菜とアボカドに、香ばしい白エビスモークのパウダーとダイシモチ麦を絡めたサラダで流れを作る。あの手この手で居並ぶ来賓を驚嘆させつつ舌鼓を打たせるそのシェフの技、そして音楽とヴィジュアルによる演出のマジックが、3時間に及ぶコースの長さを感じさせない。メイン料理の後には谷口シェフが登場し、苺バナナのデザートに液体窒素を駆使して急速冷凍するパフォーマンスも。ノスタルジックな学び舎に最新の食の技術が持ち込まれるその様子を、参加者が興味深く観察するその姿は、食を通じて新たな「学び」を得るイベントの趣旨を象徴してるようでもあった。

  • 前衛的とも言える試みのレストランイベントは、和やかでありながら心地良い刺激をもたらしつつ終了。お腹と心を満たして帰路に着く来客の姿を見ながら、「一番学ばせてもらったのは自分かもしれない」と齊藤シェフ。レスコラは時と場所を変え、この秋に第二回を予定している。

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