11月のReSCHOLA於:旧・南砺市利賀村坂上小学校

会場 : 旧・南砺市利賀村立坂上小学校(富山県南砺市利賀村184)
山深い利賀村の中にぽつんと佇む、旧・利賀村村立坂上小学校。
1996年に南砺市立利賀中学校と統合されました。
現在は「スターフォレスト利賀」という複合施設として活用されている。

第二回「レスコラ」に参加した
二人のシェフ

谷口英司L’évo(レヴォ)オーナーシェフ
たにぐち・えいじ/1976年、大阪府生まれ。
和の料理人だった父親の背中を見て育ち、料理人を志す。神戸でフレンチを学んだ後、渡仏。フランスの三つ星店「ベルナール・ロワゾー・オガニザシオン」で修行、最先端のフレンチの習得。帰国後、2010年に「レヴォ」の前進「西洋膳所 サヴール」のシェフに就任。2014年に「レヴォ」をオープン。富山のさまざまな食材を使用した「前衛的地方料理」を提供し続けている。
from TOYAMA
東森俊二Cignale ENOTECA オーナーシェフ
とうもり・としじ/1971年、東京都生まれ。
1996年にイタリアに渡り、4年間の修行生活を送る。帰国後、西麻布、白金などのイタリアンレストランでシェフを歴任。2011年に野村友里氏らと結成した料理ユニット「ノマディック・キッチン」に参加。そして同年に「Cignale ENOTECA」をオープン。イタリアで学んだ伝統的料理を基礎に、食材の特性を活かした地産地消の料理を楽しめる店として、連日満席の人気店となる。
from TOKYO
  • ワイン / 池崎茂樹 wine Bar alpes店主
  • 音楽 / 阿部海太郎
  • サウンドデザイン / 甘糟亮
  • 幻燈 / nakaban

第二回のテーマ食材は「ジビエ」

  • 県内外のクリエイターによる
    学びのある一夜限りのレストラン
    11月9日、南砺市利賀村にある旧坂上小学校(スターフォレスト利賀)にて第2回目となる「ReSCHOLA(レスコラ)」が開催された。第1回は6月15日に魚津市の旧大町小学校の体育館が舞台となり、統合により廃校となったかつての学び舎が一夜限りのレストランとして蘇った。レスコラは少子化や人口減少により県内で休校や廃校になる学校が相次いでいる問題を背景に、県内各地の休・廃校になった学校をレストランとして再利用することでそれぞれの地域の魅力を伝えるプロジェクト。レストランの語源であり「回復」を意味するrestoreと「学校」を意味するラテン語scholaから名付けられた季節ごとに異なる学校をめぐる移動型のポップアップ・レストランだ。
  • かつて子どもたちが集った学びの場を料理人、音楽家、画家、アーティストといった異なる分野のエキスパートの手によって一夜限りの非日常的な空間に生まれ変わらせる。その空間で味わう特別な体験によって改めて地域の魅力に光を当てられたら。食を中心に集い、その土地の風土や文化、作り手や食材に出会い身体に取り込むことで、富山を知るきっかけとなることを目指している。料理は同じ旬の食材をテーマに富山を知り尽くした地元の料理人と県外から招かれた料理人が、それぞれ新たなメニューを考案することで1つのコースを完成させるというものだ。

  • 見て、触れて、味わうことで
    土地の魅力を再発見
    2回目の開催となる今回の地元シェフは、第1回に続き富山市春日のレストラン「L'évo(レヴォ)」のオーナーシェフで11月12日に農林水産省が食による地域活性化などに貢献した料理人を表彰する「料理マスターズ」でブロンズ賞を受賞した谷口英司氏。店では地元の食材を駆使した「前衛的地方料理」と称する独創的なフレンチを提供している。そしてゲストシェフは、東京・駒場にあるイタリア料理店「Cignale ENOTECA(チニャーレ・エノテカ)」のオーナーシェフ、東森俊二氏。フードカメラマンを経て、イタリア・トスカーナの二つ星レストランで修行した後、ピエモンテのトリュフの名店でスーシェフを務めた経験の持ち主で、食を通じて地域を超えたコミュニティづくりに取り組む「Nomadic kitchen(ノマディック・キッチン)」のメンバーとしても活動している。
  • 生産者との繋がりを大切にする両シェフによる旬のテーマ食材は「ジビエ」。標高1,000メートル以上の山々に囲まれた利賀村は、その面積の97%が森林で多様な野生動物が生息すると共に、山菜の宝庫としても知られている。自然豊かなこの山里で、猟期を迎えたばかりのジビエをメイン食材としてコース料理が提供されることになった。

  • そして今回初の試みとして食事が始まる前に、利賀村の自然と文化、食材の生産者をめぐるツアーを敢行。農学博士で富山県職員の澤千恵さん案内のもと利賀村の各所を巡った。ことし8~9月に利賀村と黒部市で開催された「シアター・オリンピックス」担当でもある澤さんの解説で利賀芸術公園を散策。「レヴォ」に季節ごとの有機野菜や山菜を提供する農家の米倉みつ子さんの畑や谷口シェフのスペシャリテである「レヴォ鶏」に欠かせないどぶろく「まごたりん」を生産する中西邦康さんの民宿「中の屋」を訪ね、より深く利賀の魅力に触れる機会となった。

  • 会場前に到着すると燃え盛る薪の炎が客を迎え、熾火を使った料理への期待を否応なく高めた。ダイニングとなった体育館は富山県内や金沢の家具店、地元の花人らとともに、間接照明や植物、アンティークの什器を利用し晩餐会のような空間に仕上げられた。
    ゲストが着席するとサーブされた水は利賀の天然水。料理に合わせたドリンクは富山のワインバー「alpes(アルプ)」店主の池崎茂樹氏が用意した。各シェフの料理に合わせて、この日のためにペアリングを重ねて選ばれた一杯目はフランボワーズやチェリーをふんだんに使用した贅沢なベルギービール。熊やイノシシ、鹿たちが野山を駆け回りながら採食しているであろう木の実やワイルドベリーからイメージを膨らませた一杯で食事が始まった。

  • ジビエの新たな可能性を見せた
    二人のシェフによる料理
    今回のレスコラは、募集告知を通じて2倍の抽選倍率の中から選ばれた老若男女50人。参加者が着席した正面のスクリーンには画家のnakaban氏が周辺で拾い集めた落ち葉が映し出されていた。会場内にはフランスのカフェのテラス席のような明かりが灯され、テーブルには華やかな装花が並びここが体育館であることを忘れてしまうような空間に変貌を遂げていた。音楽家の阿部海太郎氏のピアノ演奏とともにnakaban氏によって描かれた富山の海と山の風景。一皿ごとに二人のエンターテイナーによる料理や素材を想起させる音と色彩によるプロローグはまさにこれから供される皿について思考させ、利賀の大自然へと誘う演出となった。
  • 「今年は熊がかつてないほどに獲れている」と懇意にするベテランのハンターから聞いたという谷口シェフはすべての皿に熊を取り入れた。一皿目には希少な穴熊のリエットに山椒やゆずの香りをまとった落花生のムースを添えた。二皿目は月の輪熊を脂が溶けないくらいの低温で火入れしたしゃぶしゃぶと生雲丹を熊と雉のコンソメソースで。三皿目は谷口シェフが「普段できないような美食家のアンドゥイエットにチャレンジした」と言う熊の腸詰。月の輪熊の内臓、すっぽん、合鴨、アワビを詰め込み、薪で香ばしく焼き上げた。

  • 東京以外で料理をするのは「ノマディック・キッチン」以来という東森シェフはイタリアンをベースに地の野菜などもふんだんに取り入れた。1皿目に「くろべ牧場」のヤギチーズとイタリア産のブッラータチーズにゴールデンビーツや赤カブ、ラディッキオなどを添えた前菜でスタート。2皿目は甘鯛を鱗ごとカリッと焼いたものに、シェフが山に入って採ってきた野蕗の素揚げをあしらいサルサヴェルデとアリオリソースで仕上げた。3皿目は最高級とされる未経産の雌イノシシのカツレツ。3種の天然キノコを使ったイノシシと子牛のソースについて東森シェフは「天然のキノコは地味だけど美味しいものが隠れている。今回あまり富山県外に出ていない食材の再発見ができたのでこれから面白くなりそう」と微笑んだ。

  • メイン料理を引き立てたワインはサンセールのソーヴィニヨン・ブランとロワールのカベルネフラン。「いずれもジビエを試食した際に驚くほど上品でクセのない澄んだ味わいだったことから、しっかりと重厚なワインではなく優しく素材本来の旨味を引き立てるようなワインを選んだ」と池崎氏。「頭で考えるのと実際に体験して感じることの隔たりに気付かされた」と振り返る。料理を締めくくったデザートは両シェフともにアイス。

  • 谷口シェフは黒文字の香りをクランブル、アイス、ブランマンジェ、スチームと異なるテクスチャーに層のように重ねた。黒文字といえば利賀の黒文字茶がよく知られているがその森のような香りを引き出し、野生の動物たちの住処である山々を想起させる一皿に昇華させた。すべてのコース料理のラストを飾った東森シェフは「チニャーレ」でもおなじみのアイスモナカ。「くろべ牧場」の山羊ミルクを使用したラムレーズンのジェラートを八尾の最中で挟み店のシグネチャーである焼印を押した。最後に手にとって食べるという原始的な行為によって、五感をフル稼働して思考し続けた頭が「ただ素直に美味しい」という充足感に包まれて、学びのあるレストランイベントは終了した。「奇跡のような空間で特別な時間を味わわせてもらった」とnakaban氏。レスコラは時と場所を変え、来春ごろに第3回を予定している。

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